ポルノグラフィにおける女性差別問題への提案
客体化された女性たち
1. はじめに
日本では、二十一世紀に入り、アダルトビデオが多くなり、「エロ本」や「ギャルゲー」のようにポルノグラフィを堪能できるモノはかなり売れている。「女性のヌードは、しばしば絵画制作のモデルとして登場し、『芸術』として鑑賞されるものと認識される一方で、主にヘテロセクシュアルな文脈の『ポルノグラフィ』として官能的な欲望を刺激するものにもなりうる(山口 2005)」。「性の商品化」はまるで正常なモノだとされている。しかも、法律では完全にポルノグラフィを禁止することがなく、経済発展にとってはデメリットがなく、ポルノグラフィを造ることはもはや歯止めがかからない。公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所(2020)は、アダルト同人販売の会社DLSITEは2020年度までの売上は250億円になったとしている。それに反して、ポルノグラフィは女性に対して明らかな暴力と差別だとフェミニストが主張してきた。フェミニストの視点を踏まえると、ポルノグラフィは深刻な問題となっている。では、どうすればポルノグラフィコンテンツを減少できるか。本稿は、「ポルノグラフィにおける女性の現状」、「女性がポルノグラフィに差別化された影響」、「ポルノグラフィコンテンツを減少する対策案」三つの要点から、客体化(objectification)という概念を用いてポノグラフィにおける女性を考察し、ポルノグラフィに女性差別問題があることを証明したい。
2. ポルノグラフィにおける女性の現状
ポルノグラフィの中に映った女性は、常に乱暴され、男性が性欲を満たすための物だと見なしてきた。すなわち、ポルノグラフィは女性を差別している。
性の批判的言語において、客体化とは、人をもの扱いし、他人の性欲を満足するだけの物だとみなすという意味である。カント(1997)は客体化について、「人は他人に欲望の対象とすると、あらゆるモラル的な動きが効かなく、欲望の対象とされると、人が物になり、人々に使われたり、扱いされたりする」と述べている。 したがって、ポルノグラフィとは、女性が客体化されることを示すものである。なお、マッキノン(1993)は、ポルノグラフィは単に言葉や画像ではなく、行為であり、女性に対する暴力と差別を直接に促進したと述べている。女性は男性に従わなければならないと表現するのはポルノグラフィの役割である。「ポルノグラフィはジェンダー不平等の宣伝で、女性が男性に従属していることを表すだけではなく、反映もした(マッキノン 1993)」という。つまり、男性と女性は客体化された女性を消費しているため、女性の価値は単に性愛価値として受けられている。さらに、今の女性たちはこういう差別を受けながら、自分の価値観を歪んでいくのではあるまいか。例えば、飲食管理したり、避妊薬を飲んだり、整形したりして男を楽しませるために、何度も男性の審美観に合わせて自分の身体を傷つける。ソール(2003)は、社会の承認を得るために、女性は男性よりも外見規範(自分の外見を満足まで変える)に至るまで頻繫に外見を変えると述べている。そこで、ポルノグラフィが宣伝したように、女性は自分を物だとみなした。バトキー(1990)は、女性の体と自分は分裂で客体化されたが、それは本物の女性だと思い込んでいると述べている。これらの示唆から考えると、ポルノグラフィにおける女性の描写は、女性を物として扱い、結果的に女性差別を助長する役割を果たしていることがわかる。
3. 女性がポルノグラフィに差別化されたことによる影響
ポルノグラフィティは性犯罪を促進する。マッキノン(1987)は、ポルノグラフィは女性をだれでも使えるモノに変え、とりわけ性欲の対象となりかねないと述べている。言い換えると、男性はポルノグラフィを通じ、客体された女性たちを消費できる。それに、この過程は、暴力の合理化を促す。強姦を合理化することは、レイプ神話(rape myths)という。レイプ神話とは、「女性は強姦がすきだ」という論理を基づいて、様々な強姦の合理化観点から組み合わせた。男性は女性よりレイプ神話信念が強いだという(大渕 1991)。大渕(1991)は「また、暴力的ポルノグラフィーには 、視聴者をレイブに対して寛容にしたり、レイブ神話を信じやすくさせるなど、性犯罪に対して親和的な態度を強める傾向がみられた 」と述べている。このような誤った認識は、女性に対する暴力が黙認される社会を形成する一因となっている。
4. ポルノグラフィコンテンツを減少させるための対策案
暴力的または差別的な内容を含むポルノグラフィの制作・配布を制限するための法律を強化するべきである。たとえば、スウェーデンでは「性の商品化」を制限するための法律が取り組まれ、特に「暴力的ポルノグラフィー」を禁止することが効果的であった(Dworkin 1974)。韓国は「児童・青少年の性保護に関する法律(アチョン法)」という法律を取り組み、最大限に児童を保護する。さらに、ポルノグラフィに関して「青少年に見えるキャラクターの性描写があるマンガ・アニメの頒布等を禁止」ということが追加された。このような法的措置は、コンテンツを制限し、社会的影響を減らす。ポルノグラフィが描く女性の客体化を減らすためには、政府による積極的な規制が欠かせない。一方で、ネットで確認機能のあるAIを起用し、インタネットで拡散されたポルノグラフィを削除できる。たとえば、YouTubeやGoogleでは、ポルノグラフィや差別的コンテンツに対する厳格なポリシーを実施しており、ユーザーが不適切なコンテンツを報告できる仕組みが構築されている。これにより、ポルノグラフィの拡散を防ぐとともに、女性差別を少しずつ改善していくことができると考えられる。
5. まとめ
本稿では、ポルノグラフィにおける女性の客体化がもたらす問題について考察した。ポルノグラフィは女性を物として扱い、性犯罪の合理化やジェンダー不平等を助長する一因となっている。特に、男性が女性を性欲の対象として消費し、女性に対する暴力や差別的な態度を容認する社会的風潮を形成することが指摘された。Dworkin(1989)は、男性が強姦や暴力を女性の意志への侵害と認識しない理由の一部は、何世紀にもわたって男性が自分たちの世界でポルノ作品を消費してきたことにある。ポルノ作品において最も根強い真理は、性的暴力が普通の女性にとって望まれるものであり、必要であり、女性自身が頼み、あるいは要求するものであるとしている。したがって、女性は自分が客体化されたことを認識するべきであり、男性にもそういうことを認識させなければならないと考えられる。
ポルノグラフィ制作や配布に対する法律の強化が重要である。スウェーデンや韓国の事例に見られるように、暴力的な内容を含むポルノグラフィの規制は社会的影響を軽減する効果がある。ポルノグラフィに伴う経済的利益を重視する一方で、そこから生じる社会的問題を軽視してはならない。本稿で示した提案が、女性差別の改善と持続可能な社会の構築につながる一助となることを願う。
参考文献
山口 理恵子. 女性アスリートによる「性の商品化」をめぐって--スポーツ規範と「構成的外部」. 年報社会学論集 = The annual review of sociology : official journal of the Kantoh Sociological Society / 関東社会学会編集委員会事務局 編. (18) 2005,p.77~88. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I7794416
公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所(2020)『出版概況』出版科学研究所
大渕 意一. 暴力的ポルノグラ フィー :女性に対する暴力、レイプ傾向、レイプ神話、及び性的反応との関係.社会心理学研究第 6 巻第 2 号.1991年119~129.
“Kant on the Metaphysics of Morals: Vigilantius’s Lecture Notes”, in Lectures on Ethics, P. Heath and J. B. Schneewind (eds.), Cambridge: Cambridge University Press, 1997.
MacKinnon 1993, Only Words, Cambridge Massachusetts: Harvard University Press.
Saul, Jennifer, 2003, Feminism: Issues and Arguments, Oxford: Oxford University Press.
Bartky, Sandra-Lee, 1990, Femininity and Domination: Studies in the Phenomenology of Oppression, New York: Routledge.
MacKinnon, Catharine, 1987, Feminism Unmodified, Cambridge, Massachusetts, and London, England: Harvard University Press.
Dworkin, Ronald, 1991, “Liberty and Pornography”, New York Review of Books, XXXVIII, 14.
Dworkin, Andrea, 1974, Woman Hating, New York: Dutton.
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